記4

ここは、わたくし(名)キリハラが新ふゆきょうの宣伝をしたり挫折したり
呪いの言葉をぶちまけたり誰彼かまわず攻撃したり
あなたと仲良くなったりするウェブログです。嘘ばかり吐いてゐる。ホ、ホ、ホ。
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気狂いとノマド
Scone 実に四ヶ月振りの更新となります。その間何をしていたかと言えば、あなた、素敵な色を塗りたくっていたとしかお答え出来ません。寝て起きて文章を書いて書いて書いて寝てまた起きてご飯を食べて寝て悪夢を見て起きる。その繰り返しが続いています。お医者様から頂いたおくすりは寝付きを良くする代わりに悪夢を見せる副作用があると言われているのです。あくまでも噂です。しかし、気狂いの間の噂は実体を持ってそれぞれに襲いかかる、それもまた事実なのであります。
 キリハラは何日も続けて悪夢を見るので、まるで中南米の伝奇作家になったような気分です。毎朝五時までには目を覚まします。悪夢の体感時間はもっと長いので、嗚呼、辛かった、もう昼頃になってしまたかと思いカーテンを開けてみると、夏至過ぎの、東雲の空が広がっているのみでありまして、烏がそこら中を飛び回ってはカァァケァァと鳴いています。悪夢からの目覚めはやたらにすっきりしたものでありまして、現実が夢の続きかと一瞬混同してしまう程ですから、再び寝る気にはなれず、マックを立ち上げて文章を書きます。毎朝、二十〜三十枚。一日の内に、その文章と、小説をいくばくか、そして読書、音楽鑑賞、暑気を浴びるための散歩など繰り返しています。
 雨は上がる時節です。梅雨は明けるのかと誰もが期待を持って空模様を眺めています。キリハラは、梅雨が明けて夏になるまでの、間隙に自分がいると考えます。何故なら、入道雲が出ていない。通常八月が積乱雲の最も高い時期ですが、夏に入れば、入道と呼んでも差し支えない程度の代物が空にむくむくと盛り上がり、のっしり太陽を遮るではありませんか。それがまだない以上、夏には、残念ながら、そう、こんなにも暑いのに、なってはいないのです。
 本日は久しぶりにスーツを着て、初対面の企業家様に面談の時間を設けて頂きました。スーツ!革靴!夏に似合わない制服!しかし、スーツを止めて私服などにしてしまったら、会社員の方々はモチベイションを落とすでしょう。ネクタイを締め、窮屈な思いをし、暑い中を歩き回って得意先や銀行に赴く事で、社会は成り立っています。また、工場員の方々は緑の制服を着て、ラインを動かします。物を作り、推し、売り、いくばくかのお金を頂く、または人を紹介し、やはりお金を頂く、そのようにして世の中は動くべきだと思います。決して、右から左に金銭を流してかすりを取るなど。
 それが罷り通っているから、今の不況があるのではありませんか。まったく。やれやれ。嗚呼。何たる事。もう。ねえ。はは。
 時間を下さった方は、キリハラの父と同年齢ながらエネルギィに満ち満ちていらっしゃり、闊達として頭の回転も速く、魅力的に過ぎる程でした。褒め殺しのようです。そでない。そうではありません。実際その通りだったのですから仕方がない。
「実は私、病を持っていまして」
「成る程。それはしっかり治さなければならない。多くの同じような人間がいるけれど、中途半端な状態で復帰してまたぞろ落ち、癖になってしまう場合もあるからね」
「はい、耳に痛いお言葉です」
「はは。だから、君、君はね、休め。しばらくゆっくりしなさい。きっちり治して、完全な元気を取り戻したら、また会おう。その際に使うため、履歴など後日郵送してくれたまえ」
「ええ、勿論。ありがとうございます」
 といった会話が為されたかどうかは別として、自分が如何に上がり症であるか、人とビジネスベースで会うのに緊張するか、人との間でテンションの張りつめる感覚がどれだけ気持ち良いかを思い出させて頂き、有意義な時間となりました。
 嗚呼、髪を切らなくては。革靴を磨かなくては。父に、前日言われたのです。
「息子、君のあの革靴は、皺だらけのようでみすぼらしい。何とかならないのか」
 実際にはしわくちゃでありません。母は答えて言います。
「あら、綺麗な革靴よ。黒でないだけで」
 黒い革靴を、お金が出来たら買おうと思います。
 再びスーツを着る仕事に戻ったならばのお話です。


 ホテルパラレル

 ホテルパラレル。私は両親を待っていました。一人で、家の中で、電気もつけずに。両親はどこへ出掛けたのかは分かりませんでしたが、間もなく戻って来る気配だけがありました。裏の扉の鍵を開ける音、鍵は古いものですから、がちゃがちゃと何度も動かさなければ決して空きません。それを、ホテルパラレル、お父様は、間もなくして、必死に回し、家へ入って来ました。私が結界と呼んでいる、小さな家の中に。お父様はやや酩酊気味で、楽しげに私の名を呼びました。出掛ける前は体調不良で不機嫌だったのに、何があったのでしょう。私はそんなお父様の姿を見て、却って気分が悪くなりました。階段を、ホテルパラレル、狭く高い階段を、お父様が前、お母様が後ろの順で上っていらっしゃります。私は真夏の蒸し暑さにかまけて顔を洗っておらず、前髪が額に貼り付いていました。服は汗臭く、アスンシオンの気候を体現しているようで、或いはそう、ボゴタの日中のようでもありました。南は、太陽に、近い。太陽は常に南にあります。両親は、その最中を汗一雫かかず、帰って来たのです。ホテルパラレル。私は、お父様から差し出された瓶麦酒を飲みながら、ダイニングで気分が悪く、お母様の時折質問される、新しい仕事についてのお話に、いい加減な返事をしていたような気がします。やがて、そこに気付いた酩酊のお父様が、詳細を聞き出そうと問い掛けました。「君、新しい仕事は見つかったのかね」ホテルパラレル。「いえ、友人のつてで頼んでいたお仕事、イスタンブルのガラタ地区でウェイトレスをするというホテルパラレル、お話、あれはなくなりました。ニューオーリンズのカフェは潰れたそうです」「君、適当な嘘を吐くものではない。僕達には分かっているよ。君が彼らと連絡すらとっていないことを」国際電話が高い。それだけの理由で私は連絡をあまりとりませんでした。その点は事実であります。両親が、娘のかけた国際電話を肩代わりするのも如何なものかと思ったのです。「ホテルパラレル、あなた、娘は、ジジジと不快な音を立てているようです。嘘を吐いているのです」「そうだね、君、不快な、旧式発電機のようだ」「私は嘘など吐いておりません。通話記録を!」「最近の若い娘は、皆そういって物証を持ち出そうとする」「ええ、あなた、そのようです」私はさすがに怒りを覚えました。「嘘など吐いておりません。ガラタの料理店は言葉が通じない点から立ち消えになり、ニューオーリンズは、なくなりました。今や町すら」ホテルパラレル。哀しい事態なのです。私は様々な場所で職を探したものの、何一つ上手く行かなかった、それだけだというのに。「娘、君、ねえ、嘘を吐くのは本当に止めたまえ」「嘘を吐いていますね、娘。あなたをこれまで養って来たけれど、お金はもう渡しません。ホテルパラレル」ホテルパラレル。嗚呼、そのようにして私の小さな胸は爆破され、肋骨が背骨から外れかけました。ホテルパラレル。私の手は麦酒瓶に伸び、いつの間にかお父様の頭を割っていたのです。「君、娘、僕の頭を割っても何一つ出て来ない。アルコールくらいのものだ」「ええ、あなた、娘はただ慌てているだけです」ジジジ。私の口は、開かないまま、歯の隙間から、不快な音を発します。「娘、ほら、嫌な音を出して」「ああ、まったくだ。この先養って行くなどとてもとても」ホテルパラレル。お父様の頭を醜く割った瓶は、頭蓋骨に跳ね返されてやはり砕け散っていました。その尖った部分を使って、ホテルパラレル、自分の両腕をざくりざくり、深くなぞるように、混乱したまま傷つけて行くと、肋骨を吹き飛ばした怒りは更に増幅されて行くようでした。お母様は何も言わず、ランダのような表情をして固まっていらっしゃり、お父様は罵倒の言葉を投げ掛けて来ました。「君、娘、その下らない瓶を捨てなさい。君が自傷をしようとも、僕達の心は変わらない。自傷などというものも、きっと嘘なのだろう。そうに決まっている」「え、え、あ、なた」お母様の口調はたどたどしくなりました。私の右足はお母様を放って、お父様の脛や股、腹を蹴りました。ホテルパラレル。「やめ、なさ、む、す」お母様の仰る言葉は既に原型を留めていません。瓶で肩や頭をひどく叩く私は、やはりランダの形相になっていたかもしれません。「娘、君、ホテルパラレル、無駄な抵抗というものだよ。既に手遅れかもしれない」仰る通り、全ては手遅れのように感じられました。「全ては嘘なのだ。全ては嘘なのだ。全ては嘘なのだ」煩い、と思いました。ホテルパラレル。いい加減やめろというお説教も聞かず、罵倒も無視して私は自分とお父様を殴り、刺し、蹴りました。アスンシオンの、よく見られる光景だったように思います。間もなくお父様は狭く、高い階段を落ちて行き、ヒヨドリを閉じ込めた鉄の箱に頭をぶつけて動かなくなりました。お母様はそこに至って初めて泣きました。私も、同じように、ホテルパラレル、涙を流し、髪を白く染め、服を身体に貼り付かせて、肩で息をしながら、腕の痛みを知ったのです。ホテルパラレル。そう、全て手遅れであり、何もかもを失ったと、やっと理解したのです。お金はもうありませんでした。働き口も見つからず、ボゴタにもアスンシオンにもガラタ地区にも破壊されたニューオーリンズにも、居場所はありませんでした。ランダと化したお母様と生きて行くしか。ホテルパラレル。そう、真夏に繁殖した赤蟻がジジジと煩くて、このような羽目になったのです。ホテルパラレル。ホテルパラレル。私は、ホテルパラレルの娘。お父様を埋めました。両腕に包帯を巻くと汗でべたべたし、傷口が膿むのです。間もなく沸いた小虫が肉を食み、骨から飛び立ちます。鳥のように。
| どうかしてしまった小説 | 18:02 | comments(2) | trackbacks(0) |
おお、こんなところを更新していたとは!
まったくもって目が離せません。
「素敵な色を塗りたくっていた」……いい言葉です。
| 魔王の友人 | 2010/07/17 1:46 AM |

 元々はウェブログを毎日更新していたのです。滞っている状況がおかしいのです。ツイッタで書く速度が上がったから、今後はちょくちょく手をつけてゆくつもりですわ。少しでも長い、まとまった文章を書かないと、どうしてもあちらだけではぶつぶつ切れてしまって思考が偏ります。ちなみに素敵な色のくだりは好きなアーティストの歌詞からです。
| キリハラ | 2010/07/17 11:34 AM |










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