2009.10.19 Monday
九十八番の後
お晩でございます。千文字小説コンペティションを毎月行われているウェブサイト『短編』さんに投稿予定の小説を置いておきます。初稿半くらいのものですが、千文字丁度ということもあって、このまま投稿してもいいかなと思いつつ、そんな甘い考えはいかんと自分を戒めている最中であります。さて、このネタは設定上二千字、四千字と膨らましてゆけるものですので、今まであまり試したことのない、同じ話でボリュームを変える手法に朝鮮してみようかと思う次第であります。もしどこかで同じ話を見かけられたらば、そちらも宜しくお願い致します。へへ……。 以下、本文。 九十八番の後(餌) 廊下を走ってはいけない。校則の第二条に書いてある。理由は蜂達が興奮するからで、彼らが怒って誰かを刺したら事故になるからだ。それでも喫緊の理由から廊下を走る生徒は絶えず、時折悲鳴が轟き、或いは慌てて教師が抑えにかかる。 刺された相手が八十番台のスズメバチまでならば保健室に血清が置いてあり、アナフィラキシーが起こらなければ助かる可能性はある。ただ、九十番台、森にしか住まないムクドリバチの血清は未だに開発されておらず、命の保証はされない。ムクドリの名を冠した数種類の蜂は大きく、鋭い顎と針で静かに人間を威嚇しているようだ。 森には蜂の王がいて、財宝を貯め込んでいる。そんな噂を真に受けた人達が森に押し入り蜂達と戦争をし、そして負けた。それが今の状況を生み出したと聞くけど、定かではない。蜂がただ人間にちょっかいを出したくなっただけかもしれない。実際、鉢の王の存在だって確認されていない。 とにかく九十番台、特に九十八番のオオムクドリバチには近付かないことが町で生き残る方法とされている。 「イタル」 僕は幼馴染に名を呼ばれ、我に返った。 「どうしたの」 「あのさ」アケルは声を潜めて言葉を継ぐ。「九十八番に刺されると九十九番になるって知ってる?」 九十九番とは、まだ何にも分類されていない漆黒の蜂を指す。 「蜂と喋ったことないから分からないよ」 「うん」アケルは微かに俯いた。「でも、この間ミキが九十八番に刺されてさ、それから妙に私の傍をうろつく九十九番がいるんだ。何か私の周り飛び回ったり、目の前で止まったりしてさ」 「恐いね」 小さく被りを振るアケル。「ううん、怖くない。不思議」それから僕の傍らにしゃがんで、上目遣いに言う。「イタルは、私が九十九番になったら怖がらないでくれる?」 僕は答えられず、チャイムが鳴って彼女は自分の席へ戻った。 翌週、アケルは友達を庇って九十八番に刺され、病院に搬送されたが治療の甲斐なく死んでしまった。 間もなくして教室に九十九番が一匹増え、僕の周りをうろつくようになった。アケルが言った通り、目の前で何かを訴えるようにホバリングすることもある。 アケルと最後に言葉を交わした時、彼女は九十九番に情を感じていた。それは今の僕にはよく分かる。ただ、僕が九十八番に刺されることを是とするか、結果彼女の元へ行けるのか、それは幸せなことなのか。答えはまだ出ていない。 |
お晩でございます。千文字小説コンペティションを毎月行われているウェブサイト『短編』さんに投稿予定の小説を置いておきます。初稿半くらいのものですが、千文字丁度ということもあって、このまま投稿してもいいかなと思いつつ、そんな甘い考えはいかんと自分を戒めている最中であります。

